共同研究のご希望の方へ

 本研究室は、ナノテクノロジーを駆使して、電子材料の誘電計測に関する研究の発展を図ることと、その成果を高性能次世代電子デバイスの開発へ応用することを目的・目標としております。具体的には本分野では、強誘電体、常誘電体、圧電体材料など誘電材料一般及び半導体素子の評価・開発及びそれらを用いた高機能電子情報デバイスや記憶素子の研究・開発を行っております。
もう少し詳細に述べますと、超音波や光及び半導体強誘電メモリ(Fe-RAM)等に多用され、近年その発展がめざましい強誘電体単結晶や薄膜の分極分布や様々な結晶の局所的異方性及び半導体中の電荷分布が高速かつ高分解能に観測できる走査型非線形誘電率顕微鏡(SNDM)を開発しています。この顕微鏡は非線形誘電率(非線形静電容量)の分布計測を通して、誘電体の分極分布や半導体中の電荷分布及び結晶性の評価が焦電現象や圧電現象、電気光学現象などを用いずに純電気的に行える世界で初めての装置であり、既に実用化もされています。その分解能も、現在では強誘電体で1ナノメータを切っており、半導体においては原子分解能を達成しています。即ち国産初の原子分解能を有し原子双極子モーメントが実空間で観察できる顕微鏡として広く認知されております。例えば本顕微鏡用プローブを、強誘電体記録の再生装置に用いれば、現在まで実現できなかった超高密度記録方式が実現可能になるなど、本顕微鏡は強誘電材料の評価にとどまらず、今後大きく発展していく技術であり、 実際、SNDMナノドメインエンジニアリングシステムを用いた強誘電体データストレージにおいて、単一ドメインドットでは直径2.8ナノメータの記録ビットの生成に成功しており、また多数のドメインドットを高密度に記録する実情報の記録で、一平方インチ当たり4テラビットのデータストレージにも成功しております。現在の記録装置の主役である磁気記録装置の記録密度の伸びが近年急激に鈍化する一方、大容量情報ストレージに関する要求が加速度的に増している今日、記録容量の革命的増大は喫緊の研究課題であると言えます。そこでこの問題を解決する一つの候補としてSNDM強誘電ナノドメインプローブストレージ技術が考えられ、日夜この技術を完成すべく研究室一丸となって研究に取り組んでおります。
また、SNDMは10-22Fという想像もできないくらい微小な静電容量の変化を計測できるという特長を有しているので、誘電体のみならず種々の材料表面の微小な静電容量変化の分布を高感度に検出可能であります。この特長を生かし、近年極限的にまで高集積化・微細化が進む半導体デバイスにおいて、特にフラッシュメモリ中の蓄積電荷の可視化や、超微細LSI中のトランジスタのドーパントプロファイル更には新規パワーデバイス用半導体素子の計測などにもSNDMは大きな威力を発揮しています。このように、SNDMは強誘電体に限らず新たな材料評価法へと展開しつつあり、更なる発展を目指して頑張っております。
現在研究活動を展開している主なテーマは以下のようになります。

1.超高分解能(原子分解能を持つ)走査型非線形誘電率顕微鏡の開発とそれを用いた材料(含む新規半導体・カーボン系材料)の評価。
2.非線形誘電率顕微法を用いた超高密度誘電体記録の研究
3.ナノドメインエンジニアリングを用いた強誘電体機能素子の研究
4.非線形誘電率顕微鏡を用いた強誘電材料・圧電材料・半導体材料の評価法の研究
5.半導体メモリ中の蓄積電荷の可視化及びトランジスタ断面のドーパントプロファイル計測の研究
6.新規半導体素子の評価及び開発に関する研究

これらのテーマに限らず超高感度かつ超高分解能な静電容量計測にご興味のある方、SNDMを使って計測を行なってみたいとお考えの方に対しては、いつでも共同研究に応じる用意があります。また新規テーマのご提案も大歓迎です。